佐々木晴明 税理士事務所

2018年2月6日火曜日

たまには勉強を~(建設業特化セミナー)税務調査で問題になる社員と外注の問題を中心として


 建設業についてもう少し深く勉強しようと考え、建設業の業種特化セミナーを受講してきました。受講料が12万円とかなり高額でしたが、川越に越してきてから、建設業の方がかなり増えてきました。このセミナーを受講するきっかけは、建設業の税務調査立会いをする機会があり、もっと勉強してお客様のお役に立ちたいと考えたからです。このセミナーで学んだところで一番面白かったところは、後半に書きたいと思います。

良くある家族の構図

 建設業では、家族経営のところが多くあります。
ある家族の話を例にします。
~経理担当のお母さん~
見よう見まねで、自己流のやり方を長年してきてました。特に問題がなかったので、改善することはなくそのまま経理をしていました。ある日、税務調査があり、自身の経理のやり方が間違っていることを知り、私ははすっかり自信をなくしてしまいました。

こんな悲劇が割りとありふれています。

建設業だけでなく、よくある税務調査のポイント

調査では、「期ずれ」という用語がよくききます「期ズレ」とは、期間対応がずれているというものです。例えば、12月の工事の売上が2社あります。A社は翌月末入金。B社は翌々月末日入金です。A社は1月末にお金が入ってきます。B社は2月末にお金が入ってきます。通帳を元にお金が入ったときに売上を立てる人は多いですが、これは間違いです。平成29年12月に売上を計上しなければならなかったにも関わらず、お金を入金されたときに売上を立てるのでは、平成30年1月及び2月の売上になってしまいます。このように期末をまたぐことを「期ズレ」と呼んでいます。売上が乱高下する職種の場合、この期ズレがあったときの話は特に問題になりやすいです。



建設業における、外注さんと社員の問題 税務調査ポイント

建設業の場合、お仕事をしてくれる人件費が、外注さんか社員さんかが大きな問題となりやすいです。現場の社長さんたちは、どちらでもいいと考えていますし、できれば消費税の経費となる外注扱いにしたいと考えます。社員として抱えると社会保険の負担も生じますので余計に外注として使いたいと考えます。つまりコストダウンという側面から外注にしたいというインセンティブが働くのです。

ある社長さんの頭のなか

A君は、まじめに働いてくれるから、ずっとウチで働いてほしいなあ。よし、社員にしよう。
B君は、気性が荒くて使いづらいところがあるから、ずっとは働いてくれないだろうなあ。
じゃあ、B君は外注にしよう。
C君は、社員候補だけれども、まだちょっと半年くらいは人間性を見てから社員にするか外注さんにするか決めたいなあ。社員にすると社会保険にもいれてあげないといけないし・・・とりあえず試用期間のうちは外注さんにしよう。

別の社長さんの頭のなか

外注さんだと、消費税の経費になるけれど、社員だと社会保険に入れないといけないからコストが高くなりすぎる。また、社員だと消費税の経費にならないから社員にしないでおこう。


この2人の社長さんの頭の中は、どちらもありがちですが、非常にリスクを伴います。


契約と業務内容によって社員か外注かは違う

社員の場合は、雇用契約によって、労働力を提供しますし、外注は、請負契約によって労働力を提供します。
法律の話で少し難しくなるのですが、端的にいうと似ていますが全く違うものです。

例えば、Aさん(アルバイト)・Bさん(外注)の2人がそれぞれの現場でレンガで道を作る仕事をします。
Aさんは,夕方終わらなかったのですが、社長からの指示で明かりをつけて頑張って終わらせました。
Bさんは、夕方終わらなかったのですが、まだ納期が余裕があったので帰りました。
ところが、Bさんは敷くレンガの色を間違えており、施工主からの電話でそれを知り、慌てて夜に現場に戻って正しい色のレンガを敷き納期に間に合わせる段取りを整えました。
さて、このときに、アルバイトAさんは、雇用契約ですので残業代をもらえます。外注のBさんは、残業代をもらえません。なぜなら請負契約だからです。請負契約とは、作業を完了して、引き渡してはじめて終わりだからです。かわそうですが、間違えたため、納期に間に合わないのでは、そもそもお金がもらえません。納期よりも早く終わったらその分、Bさんはうれしいですが、今回のように間違えていたため作業時間が大幅に伸びてしまってもそれは、本人の責任です。それが請負契約です。

現実には、社員か外注かは完璧にわけるのは難しい

社員か外注かは、現実にはそんなにわかりやすく分かれているわけではありません。
契約をきちんと結んで作業に差を明確にしていれば、良いのですが現実にはひとつの現場に、社員と外注が協力して作業していることが多いです。
その場合、色々な判定基準を元に、社員の色合いの強いか外注の色合いが強いかを明確にして税務調査のときに反論できる材料をそろえておく必要があります。
外注として人をお願いしたいのであれば、はじめからボタンの掛け違いのないように整備しておく必要があります。
そのあたりは顧問の税理士と相談してください。

外注さんと確定申告

建設業の場合、社員については、税金を給料から天引きしているため煩わしいことを考える必要がなく手取りでもらったお給料の中だけで生活すれば社会生活をすればいいので、気楽です。
しかし、外注さんについては、自身で確定申告を行うことが必要です。
確定申告で、税金を確定し納税する必要があります。
お給料から天引きしてもらえないので、自身で計算して申告する必要があります。
しかし、どうせばれないだろうと何年も無申告である外注さんは、建設業だと一定割合います。


なぜばれる。その無申告

会社に入った税務調査で、外注さんと社員さんのリストアップはよくされます。その中で外注さんの中に申告していない人がいて、かつ実態が社員と同じ勤務形態ではなく、外注だと認定されたらその人のところに税務署は調査に向かいます。
このように別の会社に税務調査が入ると芋づる式に、無申告の外注さんが浮かび上がってくるのです。

確定申告を忘れていてもあきらめないで

無申告でずるずるしてしまっている人の中には、3/15を過ぎたら前の年の確定申告が出来なくなると勘違いしている方がいます。そんなことはありません。3/15過ぎていても確定申告はできます。
なんとなくおびえながらすごすよりも良いと思います。
無申告だと銀行のローンも通りません。アパートの審査も落ちます。奥さんや子供に見つかる前に正攻法できれいにしたほうが良いと思いませんか?




2019/9/10追加記載です。
建設業向け 税務調査の記事の2つ目を記載しました。
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